
つらいような。しあわせなような。
岸辺一徳が、85歳のおじいちゃんに、「50から85までって長いですか?」って訊く場面があるんですけど、35年、は、初恋から今50歳の君になるまでの長さくらいですね、と思いました。
それを思い返せば見当がつきそうなものなのに、なんで訊いたんでしょうか。
15の頃から50歳になるまでの年月と、50歳から85歳になるまでの年月。
坂の多い町。地方のちいさな町。
同じ町で、ずーっとずーっと、単調な毎日をくりかえして。
美奈子(田中裕子)と塊多(岸辺一徳)と、ふたりはちゃんと好きどうしなのに、きっとお互い知っているのに、呪いがかかっているかのように、ずーっとずーっとしらんふりで。
「高梨さん」って呼んでいたのに、声が届かなくて、美奈子が「塊多!」って大きく下の名前を呼んで、塊多がぱっとふりかえったときの、35年の時間の流れをものともしない、みたいな、あの表情が忘れられません。